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ー藤野合宿での創作発表の題材小説の内容と狙いー
創作劇のテーマ:「差異」
題材小説:『東電OL殺人事件』(佐野真一著)
[内容]
1997年3月8日、渋谷区円山町喜寿荘101号室で渡辺恭子(39歳)の死体が発
見されます。渡辺恭子は慶応大学経済学部を卒業後、東京電力に入社、エリ
ート社員として勤務する傍ら、毎晩円山町で娼婦として1日3~4人のお客をとっ
て、決まったように最終電車に乗って家族の住む自宅に帰っていた。エリート
サラリーマンが何故、娼婦の生活を送るようになったのか、「大堕落」に赴く渡
辺恭子の衝動の深さに興味を持った著者が、聞き取りをとうして、現代人の
心の闇を浮き彫りにしたノンフィクションです。
なりふり構わず堕落して、夜の町に娼婦として立った渡辺恭子の心の闇は何
が原因しているのか、また何に反抗しているのかを著者は調べます。きっか
けは,愛する父の死,父と母の不仲の発見。母への反発。社内関係では、関連
会社への出向、ライバルに破れて出世コースから外れる。こうした事を通じ
て、渡辺恭子は堕落する事によって自分を救い出す道を見つけようとしたの
ではないかと著者は推測しています。
[狙い]
現代人の心の闇の深さは、渡辺恭子の個人問題なのか。閉塞感の蔓延する
現代人の共通の問題ではないか。誰もが、いつでも簡単に陥ってしまう不安
の中で、どう自分を発見して救っていくのか、価値観を何に求めるのか、エリ
ート意識を捨てきる難しさと、葛藤をとうして、我々はどう生きていけばいいの
かを事件を題材に考えています。坂口安吾著『堕落論』の中に「人間は生き,
人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない」。「人は正
しく堕ちる道を堕ちきる事が必要なのだ。堕ちる道を落ちきることによって,自
分自身を発見し,救わなければならない」、落ちる勇気の強かさが、私に強烈
な一撃与えてくれた作品でした。
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