単独実験工房失敗綺譚
【私は蝶になりたい。傲慢と偏見の殻を破り、蛹から成虫へと進化したい。…
退化即ち自然摂理へのぼうとく。あってはならないこと。何時だって「その瞬
間」に恋焦がれ、今か今かと待ち望んでいるのです。…いや、待っているだけ
ではいけない。自分の手足を使って伐り拓いてゆくのだ。…それでも、私はい
つまでも夢と現の狭間でもがいてる…。】
藤野合宿`05。私は2年振りの参加だった。林式メソッド・ファリファリとも一年
以上
ご無沙汰だったので、今回の合同WS・試演はかなり不安の種だった。
しかし、久方振りに訪れた藤野の空気は2年前と変わらず、私に馴染んだ。今
思えば、それがいけなかったのかも知れない。
初日のWS(夜)は緊張と支緩の間で凄まじい圧力を感じた。ベテランや若人の
エネルギーに押し潰されまいと必死に抵抗するが、やはり恨負けしてしまう。
何処かで冷めている、というか冷静な自分が居る。いっそ頭の螺子(?)がぽー
んと飛んでしまえばどんなに楽か!…とぼんやりのらりくらりと思考回路が詰ま
り、日は沈みまた朝がやって来る。。。
試演会のチーム分けで私は斉藤麻衣と高校生のY.Sさん、M.Tさんと一緒にな
った。
「流れ星」の彼女達は本当に流れ星の如く澄んだ存在感を振り撒いていた。
ファリファリを頭では無く、本能で理解している感じ。その研ぎ澄まされた感性
には無理矢理詰め込んだ知識・経験は無惨にも崩れ去る。近い所で触れる
事が出来たのは良い刺激になった。
さて、自分の肝心のモノプレイは…。本番前日までどうしようも無い負の感情
に襲われ、余計な雑念に悩み、表現したい核も定まらず、嫌悪、嫌悪、嫌悪。
結果は己に対して惨敗だった。
今回は自分自身の弱さに改めて気付かされた。
イメージは出来ても、表す事がままならず、根本は変わらないので曖昧にな
る。
あれだけの人数で沢山の「個」に触れていると、右も左も面白いので自分の
居場所に混乱してしまい、立っていられなくなる。…いやはや、人間とは卑し
く、脆い生き物である。ここから、だ。天国も地獄も神頼みでは無く、自分次
第。私には伝えたいモノがある。プレイヤーは私であり観客、相手。例え永遠
の苦行であっても止めたくは無い。だから、歩いてゆく。「お楽しみは、これか
ら、です」
2年振りの藤野の別れ際はあっけないものであったが、後に残るのは膨大な
課題と紛れもない変わらぬ自分自身…。
試演会の評
吉田さん:
「テクスト/マテリアル」を基盤と考えると多少言葉への意識が弱く感じられまし
た。発語の意図が汲み取れないのです…。面白い題材、アプローチなのにも
ったいないです。
増永さん:
キャラクターは面白いのですが、何かが欠けています。その「カケラ」が見つ
かればいつか「作品」に成るのでは。。。体の操り方も要研究ですね。
江口さん:
シンプルだが嫌いじゃないです。私の好みの問題かも知れませんが、最初と
同じく最後も「キレ」が有ると新撰組の如く清々しさが感じられたと思います。
大さん:
漂うニュアンスが中世の大泥棒ルパンの様なカリスマ性=異質さを秘めていま
した。以前のモノプレイよりも少年Aが世間から隔離されている状況が汲み取
れていたのでは無いでしょうか。だから見ていて引き込まれます。良い意味で
思わず目を背けたくなる感覚が有りました。次は冷静を越えて情念を魅せて
下さい。
佐藤多美子さん:
ただ単純に汚れた手を拭かないといけない様に見えました。その行為で瞬時
に現実に引き戻されました。果たして、それは良し悪し、何処(いずこ)なのでし
ょう。。。もっと本能のままに動いてみたら面白くなるのでは、と想いました。
長尾さん:
重い体がまるで未知の生命体の様でした。そして発せられる音も重く、暗い闇
の中に虚しくも吸い取られてゆく…まるで独りの人間の苦しみが其所に在りま
した。取り出した物体は、私には「腐った魚=使えたのに使えなくなってしまっ
たモノ」の様に見えました。
松本さん:
真っ直ぐなモノプレイでした。拙さが何とも言えず不気味に映ります。ラストの
台詞を敢えて言わずに表現した方が、コントラストも生まれ、より一層深みが
出ると想いました。
渡邉さん:
常に後ろに「何か」が存在する感覚。それは、お母さんでもあるし、私自身の
影でもあったのでしょうか。振り回されているようで、実は自ら振り回している
…そんな風に切なく見えました。女という生き物は不思議だな、と感じました。
酒井さん:
全体的にやるせない、脱力、無力、現代人の抱えている闇が取り巻いている
様に見えました。どうしようも無く現状に感じるストレスが行き場も無く、結局自
分の中の過去・架空の故郷に見入られてしまう…。そんな未来への絶望が現
れている様でした。短時間で表現するには料理お皿から溢れてた感がありま
した。
上原さん:
テクストが意味をなしていない様に受け取れました。何も言わずに黙っている
だけでも面白いと想うのです…。
西さん:
静かな海の様でした。解っているのに解らない振りをして解った風に装う。本
当は一番絶望しているのに知らぬ振りして謀。。。さりげない微笑には冷笑が
見え隠れしている様でした。
河合さん:
嫌味の無い喉越し爽やかな逸品でした。自分で敷いたトイレットペーパーの上
を歩く姿=生きる道、というかそこが印象的でした。ただ、観ている時には気持
ち良いのですが、終わった後、(良くも悪くも)「あれ?で何だっけ??」という気持
ちになりました。
長谷川さん:
冗談なのか本気なのかすれすれの部分で遣っている様でした。まるでキャット
ウォークを片足で歩いているみたいな…。堅実な道を歩いている長谷川さん
も観てみたい気がします。
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