■試演会〜全体の感想
個々人の人間の思考っていうのは本当に面白く、興味深いものです。思考し
たものっていうのは、その人自身の色をより雄弁に語ってくれたりもするもん
で、それが、「あー、この人はこういう色なんだなー」とか「この人にはこの作品
のつくり方じゃ色がよく見えない」とか「なんじゃこの人は。何色なんだ」とかま
ぁ、良くも悪くも色々とそれぞれ色が見えたりして、それがほんとにほんとに面
白いわけです。いや、「色」って、うまいたとえ言葉が見つからないから、ただ
「色」って言ってるだけなのですが。
今回特に思ったのが、「自分」という媒体を通じて、何を表現するか。という、
目的意識というか、そういう意識の差みたいなのが、目につくなと思ったことで
すね。モノプレイは、「自分」が使えるのは、「自分」しかいないわけで、まあ、
小道具等色々ございますが、一番目に付く表現の道具はその人自身なわけ
であります。はい。
その「自分」というものをどう料理して、解釈して、その上で自分以外のものを
自分の体でどう表現できるか。その意識の差、思考の差というのは、個々人
で様々だったなぁ、というのが感想です。当たり前ですが、表現をするのは自
分です。他の誰でもない「自分」が表現をするんだということに気付いている
人、そのことについて思考した人、「表現すること」のみの人、というかなぜ自
分が表現をするのか??ん???。まあ、色々なわけです。
そこを今回目の当たりにして、まぁ、ほんとに演劇というか表現というか、自分
というか、そんなものほんとにややこしくて、やったら難しいものなんだなぁ、と
いつもながらに実感するのであります。嗚呼、底なし沼。
■試演会〜個別の批評
Aグループ
・吉田さん
聞いた事あるテキスト。ううん。どこで聞いたのだっけ??聞いた事あるテキ
スト、ということで若干印象が違ったのかもしれないのですが、このテキストな
らもっと…こう、具体的には言え無いのですが、違う方向からの表現があった
のでは、と感じてしまいました。だからかもしれないのですが、テキストに全体
の印象が負けている感じを受けました。
・増永さん
歌声、か細く女々しくねちこく、私は好きです。シャツの中に足を入れて丸まっ
た格好。まるで胎児のよう。歪んだ胎児。テキストは多いが、あまり心に残ら
ない。代りに何か本編とは関係の無い、断片的な絵が突然見えてきたりす
る。これがいいのか悪いのか私の見方が悪いのか、判断できないのですが
…すみません。
・江口さん
もっと色々みたい。音響の水音、次の大さんへの受け渡しのコントラストは微
妙にリンクしあっていて、おお、と思った。
・大さん
ああ、ボウルの中の小宇宙、自我??飲み乾してしまった後、その小さな世
界、だからどうするんだろうね。Aの心情や声明文よりも、そっちの方がよほど
知りたくなる。もっと、何か、こう、大さん自身のしがらみから外れた表現が見
たい。
Bグループ
・佐藤さん
ケーキ…全部食べて欲しかったなぁ。役者自身が、理性的な歯止めを演技に
かけるのを、見てる側に知られたらその時点で見てる側はひいてしまう。役者
自身の自分の演技に対する理性的な思考は必要だと思うが、そこをこちらに
気付かせては(今回の作品のつくりかたでは)駄目だと思う。あと癖?なの
か、動きが全部過剰に見えて集中できなかった。
・長尾さん
ああ、自然の中の、思考の無い、時間の感覚の無い、生きているだけのもの
の、その咆哮。それに哀愁を感じるのは私が人間だからなのかなぁ。言葉を
持たない物の、何か。うーん。深い。しかし、あのカンカンの二人は果たして必
要だったのか??私にはむしろないほうが集中して見れた…というか集中し
て見たかった。精一杯で好感。
・松本さん
雰囲気ありますねー。体とか魅力的ですねー。練習着じゃなかったらなぁ。あ
あ。テクストや設定よりも役者自身の持ち物、あり方、雰囲気の方が多く滲み
出ていた。
・渡邉さん
自分の生かし方が上手だなぁと感じた。雰囲気と作品のつくり方に食い違い
がないからすんなり見られる。でも服で覆いすぎ。それとこのグループは人を
使いすぎだと思った。あるから使っちゃった、みたいなところが見えて、うー…
となる。もともと「モノプレイ」なのだから、一人で表現する作品をつくったはず
なのでは??効果的に使っているなら別にかまわないのだけど…。
Cグループ
・斉藤さん
安易。
・佐原さん
未熟さが、とてつもない魅力になることもある。まだまだだけど、でもこれから
って思わせたら、それでいいって思ってしまったりする。そんな感じ。
・田口さん
その時代の、その年齢でしかだせない何か。等身大のありのまま、考え考え
素直に一本道。その分ストレートに伝わる。
・小暮さん
小暮さんの最初の音響が、田口さんが去って行く時に流れてて、それがすごく
何か伝わるものがあって、その瞬間に曲が彼女のもになってしまった。あちゃ
ー、曲をとられちゃったなって思った。小暮さんのが始まってからも、小暮さん
のスタートよりも、田口さんの終わりのほうに引きずられて、ずっと目がいって
しまった。
うーん。難しいけど…なんだろう。やるならやるでそこで満足しないでとことん
突き詰める。そうでなかったら新しい世界を求めなければならない。狭い世界
の中の足踏みしている表現には先を感じない。若干滑稽にすら見えてしまっ
た。
Dグループ
・酒井さん
不器用なのだけれど、そこがたまらなく愛しい。みたいな。オセロへの思考、
酒井さんへの思考、音響への思考。色々とめぐらす物がありました。特に音
響は、けしてそれがベストではないんだろうけど、けれど、作品の軸から外れ
てはいない、という微妙なラインの選曲で、私はそこがたまらなく面白かったり
します。グレープフルーツから新聞にかけてのラストは印象的。すごく訴えるも
のがありました。
・上原さん
表現を受け取る事ができなかった。やりたいことはなんとなく見えるけど…で
も????という感じ。
・河合さん
綿密な思考が張り巡らせてあるのに、全くそれを感じさせないとぼけた(すい
ません)演技、作品構成。こうやって、うまく思考を隠してある作品はぞくぞくし
ます。パズル解く感覚に似ている。なんだろう、役者自身が、今自分自身も何
がどうなってるかさっぱりわからない、というような状態を見せられると、こちら
は役者は思考していて、これも決められた段取りの一つだとわかっていても
何故か、身近に感じてしまう。うまーく気付かないうちにジェットコースターの隣
に乗せられてしまった感覚。罠にはめられるスリル。
・長谷川さん
嫌いじゃない。役者の主張は強く感じる。なんだかんだいって結局人間が嫌い
になりきれないところが見えてしまう人間性に好感を持つ。
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